医療系において大学とは何を意味するのか
医師や歯科医師、薬剤師を除けば、基本的に医療系国家試験の受験資格は専門学校でも得られる。大学に進学する必要はない。
しかも、受験資格を得るために必要なカリキュラムは、指定規則で縛られているため、大学であろうが専門学校であろうが大差ない。
大差ないと言い切ってしまうと、大学で教鞭をとっている教員から反発を食らいそうだが、指定規則の縛りが厳しく、かなりの単位数が決まっているので、自由裁量が少ない。
大学と専門学校の違いは修業年限と総単位数、そして学位くらいしかない。
受験資格だけを切り取れば、修業年限の短い専門学校の方がいい。短い年数で受験資格が得られるのだから、学費も時間も節約できる。
では、医療系であえて大学を選ぶと言うのは何を意味するのか。違いは何なのか。
教員の立場からは、大学であれば事務も多くいるので研究もできるというメリットがある。教えるという点では大学も専門学校も大きくは変わらない。大きな違いは研究環境があるか無いかである。研究能力が無い人には辛い環境かもしれない。
では、学生から見た場合はどうだろうか。大きな違いは、修業年限と、学位だろう。
学位に優位性を見いだせれば、大学を選ぶだろうし、受験資格に優位性を見出せば、早く受験資格を得られる専門学校を選ぶだろう。
今の大学は学位に優位性を見出した学生の期待に応えられているのだろうか。教員は学生の期待に応えられる教育を提供できているのだろうか。
教員になろうと思う人は、常にそうしたことを自問してほしい。憧れだけで大学の教員にはなって欲しくは無い。
学生が、専門学校ではなく、大学を選んで良かった、と思えるような教育を提供して欲しいし、努力して欲しい。そうでなければ、学生が不憫で、惨めである。
常に研鑽を積んで、一つ上の高みを目指す教員にならないと、これからの時代は、学生に選ばれないし、ひいては大学にも選ばれない。
大学と専門学校に際立った違いの無い医療系の世界において、大学教員のレゾンデートルが何か、それを常に思索し続けられるものが、これから求められていくようになるように思う。